もしも、Ver.1
優斗と一緒のクラスだったら。
6月。
まだクーラーを点けちゃいけない時期で。
でも蒸し暑くなってきていて。
セミ達は、夏だと思って鳴く。
思う存分に。
窓から吹く風が、唯一の涼しさ。
「あちぃー・・・」
溶けるように机に突っ伏して、
下敷きでパタパタと扇いでるのは、
隣の席の、優斗。
Aクラスになるのは当たり前かもしれないけど、
席が隣になるのは・・・
・・・もう、くじ運使いきっちゃったかも。
「アイス食いてぇ・・・。」
ぽつりと呟いた優斗に、母性本能はくすぐられまくり。
・・・可愛いなぁ。
「ゆずアイス、美味しいよね。」
「? そんなんあんのか。」
「うん。
あんまり売ってないんだけど、駅前のコンビニにはあるんだ。」
「うわー、食いてぇ。
・・・練習終わったら買いに行くか。」
そう言って袖を捲り上げる。
「行くんだ(笑)」
「おー。
・・・って、ちょっと待て。
お前、付き合えよ?」
「・・・えっ?」
黒板に書かれた『自習』という文字から、慌てて優斗を見る。
「似たようなアイスあるからわかんねーよ。
どれなのか教えろ。
おごってやっから。」
・・・あー。
蒸し暑さよ、ありがとう。
その日のゆずアイスは、いつもより何倍も美味しかった。
END