もしも、Ver.1

二人に電車で会ったら。





・・・ガタン・・・ゴトン・・・



静かな揺れが心地良い。


・・・あー、眠い。
やっぱり夜勤はキツいなぁ。



重くなる瞼を必死に上げて外の景色を睨むように見る。






あと二駅。

今寝たら確実に乗り過ごす。


やばい。寝るな、私!






「・・・おい、寝んなよ。」


はいっ!?


耳に入ってきたのは優しい、低い声。


声が聞こえた方へ視線を少しずらすと、視線の先にいたのは向かいの席のカップルだった。



男の子は深く帽子を被ってるし、女の子はマスクしてるから完全に見えるわけではないんだけど。

・・・明らかに美男美女。



席は所々に空席があるくらい。


皆、自分の世界に入っていて。

彼らを盗み見てるのも、きっと私だけ。






女の子は男の子の声に微かに反応しながらも、反対側のおじさんの肩にもたれ掛かってしまう。






「・・・すいません。」


新聞を読むそのおじさんに謝りながら、元の姿勢に戻してあげる彼氏。





・・・ガタン・・・ゴトン・・・




心地良いリズムを刻み続ける電車。










・・・・・・・・・・・・あ。







また、おじさんに寄りかかってしまった。






でも、不機嫌そうな顔をしたのはおじさんじゃなくて。




「・・・ほんとすいません。」



男の子の方だった。







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