もしも、Ver.1
奈々美が休んだら。
ーーーーーー・・・ガラ
俺が稽古場に着くのはいつもギリギリで。
皆はもう準備できてて。
あいつは嬉しそうに振り返るんだ。
けど。
「・・・・・・あれ。」
その笑顔がない。
というより、見当たらない。
「おー、おはよ!」
「おう。」
「お前、いっつもギリギリすぎんだよ。
たまには早く来いや、王子様っ!」
「・・・うっせ。」
しつこい尚樹を手で追い払いながら、目は他を見ていた。
・・・あの魔法使い役といつも一緒にいるよな。
知ってっかな。
・・・いやいや、聞いてどうする。
絶対尚樹にニヤつかれるわ。
さすがにこのギリギリの時間でトイレ行くようなやつじゃねぇし。
・・・腹壊したか?
と、考えながらエナメルを端っこに下ろすと、
「うぉっ・・・!?」
魔法使いが微笑みながら隣に立っていた。
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