もしも、Ver.1
目だけを俺に向けて、体は前を向いていて。
「奈々美、気になる?」
そう小声で聞く姿は。
あぁ、俺が探してんの気付いて。
おまけにバレないように気ぃ遣ってくれてんのか。
その機転の良さと親切さに感謝しながら、
・・・でもやっぱ怖ぇな。
何でも見透かされそうで、そんなことをつい思う。
いや決して、決してやましいとこなんかねぇんだけど!
いや、あいつの事とか別に考えてねぇんだけど!
・・・いや、それは無理がありすぎるか。
「・・・ふっ。」
「?」
「いえ?
お姫様のこと考えてるところ悪いんだけど。」
うぁ!
やっぱりだよ。
なんでわかんだっての。
怖ぇよ、まじで。
「ふふ。言っておくけど、思いっきり顔に出てますからね?」
!?
「まぁ、それはさておき。
奈々美、熱でお休みよ。」
「え・・・」
あいつ。
昨日最後まで稽古残ってたから。
・・・だから無理すんなっつったのに。
「まぁ、帰り道何故か大事そうに飴の袋持ってたけどねぇ。」
「!?」
「気になるなら連絡してみたら?
どうせ連絡先交換してるんでしょう?」
な、なぜそれを・・・!?
散々俺を翻弄させておきながら、
俺が驚いてるのを放ったまま、魔法使いは去っていってしまった。
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