恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
私は、元夫にも、その他のつきあった数少ない男たちからも
そんなふうに扱われたことがなかった。

みずきくんは…とにかく優しい。
まっすぐに私だけを見つめ、まっすぐに向かってくる。
私の想い以上に、彼の想いの強さが前面に出る。

子ども達の前ではそれでも気を使ってくれていて、
その辺りはただ押しが強いだけではないことを感謝していた。

初めの頃、余りの真摯さに、自分の醜さを知った途端に
離れてしまうんじゃないかとおびえていた。

前の主人は私からプロポーズして結婚したし、
あの人も最終的には私が追いかけてなし崩しにした。

私は、追いかけて憎しみを抱くほど愛した男はそれなりにいたが、
大事にされ、溺愛されるようなことは今までなかった。

その温もりに包まれているといつしか今まで自分の犯した罪が
薄れるような錯覚すらあった。


溢れる泉のごとく枯れることを知らない思い。それが愛?

それは、ただ憎しむほど愛して、躰を重ねることとは明らかに違う。

何かが…
何かが違う。

私の中にある冷たい心に、暖かい日差しが降り注いでいる。
薄皮をはぐように徐々にではあるがその心の氷がゆっくりと、
ゆっくりと溶け始めていた。
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