恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
「からかわないでよ。やっと笑ってくれたからいいけど」

私はつい、彼をもう少しからかいたくなってしまった。

「何をどこに込めるの?」

「いやーだから、そういう意味じゃなくって…」

「ねえ、何の決意?」

その言葉に促されるように彼は向かい合うように座り直した。

私は彼のまっすぐな瞳に吸い込まれそうになった。

「ひなと一緒に生きていくって。絶対あきらめないって。
僕の持てる物すべてでひなを守る。だからひなに僕の気持ちを躰を、
全部を受け入れてそして、ひなの持つもの全てを与えてほしい」

その瞳の純粋さを信じてみたいと…
そのまま瞳に射抜かれて彼に取り込まれてしまえばいい。そうすれば離れなくて済む。

もう一度だけ、今まで望めなかった幸せを彼となら掴めるかも、
掴み取ろうと心から強く思った。



目の前の彼の纏う空気が変わった。さっきの瞳とは違う甘い視線をこちらに向けてくる。

その視線にゾクリと身体が震えた。その時私の携帯も震える。

抱きしめてうなじに寄せていた唇を離し彼が

「携帯いいの?」

と言った。

「たぶん迷惑メール。用事なら、また、来るだろうから」

私は、それが誰なのかはわかっていた。でも…

もう出ない。
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