恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
しばらくそうしていると、びくっとして彼の身体が動く。
私の撫でていた掌を優しく握って

「あははっ。もしかして…
また寝てたね。ごめん」

反対の手で目をごしごしとこすり、無理矢理起きようとしている。

「大丈夫なの?」

私は、マグを持って彼に差し出した。

「大丈夫」

そう言いながら彼は首を横に何度も降り、目を閉じたりあけたりしながら
意識を手繰り寄せようとしているように見える。

「大丈夫じゃないよ。倒れる」

それから、私の持つマグを受け取りコーヒーを口に含む。

表向きは母親が気になると言って帰っていたが、おそらく理由はそれだけではないのだろう。

普通に働くだけで、膨大な仕事量をこなさなければならないこの時期はこれでさえ大変なのに、
持ち帰り仕事を抱え、娘と遊び、それから実家に帰るなんてそんなの無茶苦茶だ。

私は彼の身体が心配だった。真面目でどれも気が抜けない。
実際彼にとってはどれも大切なのだろう。
なんとか色々な事を上手くやるために、水面下でもがく彼をただ見ていることしかできない。


心配なのに、私は…
直接的にはなにもできない。今私にできることはただ、待つこと。
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