恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
コンビニの脇に止められた車。

彼の車だ。さっきは気づかなかった。なんで、みずき君がここにいるのかわからなかったが、

「みずき君。…み・ず・き!!」


その車に向かって思いっきり呼ぶと、さっきはスースーしか言わなかったのに
それは叫び声になった。

車に人影は見えるような気がしたが…
反応はなかった。

私が叫んだ瞬間、周りのたむろしていた数人の視線が一気にこちらに集まる。

その視線を無視して、あの人はみずき君の車を行き過ぎ
端の方にぽつんと駐車していた車まで私を引きずり、
ガチャット音がしたかと思うと後部のドアを乱暴に開け座席に私を押し込んだ。

さっきそそがれた視線も我関せずなのだろうか、まわりで騒ぎになる様子もなかった。

そして、あの人は自分も私を押し込んだ後、その隣に乗り込もうとする…
私は押し込まれた不安定な体勢のまま、目をつぶり自分の身体を強く抱きしめた。

もう逃げられない。
またどこかに連れて行かれるのだろうか?
また何かされるのだろうか?

私は震えながら、それでも成り行きを見て何とか逃れる術を探さなければと、
勇気を振り絞って目を開けた。



しかし、あの人の体は私の所には飛び込んでこず、不自然な姿勢ではたと止まった。
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