恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
彼は、呆れた顔をして首を振った。

それから、私の顔に右手を伸ばし、細い指で愛おしむように私の前髪を払って

「…怖かったんでしょ?」

彼は首をかしげて私の目をのぞきこんだ。

そっか、あれって怖いと思う場面なんだ。

今まで、何にでも一人で立ち向かうしかなかった私にとって怖かった?
と尋ねてなだめてくれる人はいなかった。


そう思ったとたん、身体ががくがくと震え始めた。

その震えを包み込むように優しく抱きしめて、穏やかに私の頭を撫でてくれた。

「ねっ。ほら。今頃怖くなってる。ほんとうはすごく怖かったくせに。
僕の前では意地張らなくていいから。頑張りすぎなくていいから」

「うん」

「…本当はね。僕も怖かった。でもよかった。無事で」

もう一度ぎゅっと彼が抱きしめてくれた。
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