恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】

目覚めの憂鬱

しばらく私は、さっき起った事で、もう危険はないのにそれでも震えが止まらなかった。

彼は私の頭を愛おしそうに指で撫でつけながら、そのまま静かに抱きしめてくれていた。


こういうことさえ、今までなら自分一人で抱えてきた。

誰も頼れる人なんていなかった…

娘たちが辛そうになって抱擁を求めた時、その子を抱きしめながら、
私を抱きしめてくれる人がいないことを、身に染みて思い知らされていた。

そして、仕方がなく一人でそれなりに対処し、乗り越えたつもりになっていたけど…
本当はそんなに強いわけじゃない。

私だって誰かに無条件で愛されたい。抱きしめて欲しい。

そんなことを彼の胸の中で震えながら考えていたら…
いつの間にか寝てしまったらしい。

意識がもうろうとしたまま、重い瞼を無理やりうっすら押し上げると、
彼は私をベッドにおろし、上掛けを首元までかけまじまじと見ていた。

「早く一緒にいられるようにするから…」

そう囁いて私の頬に唇を寄せる。

その温かい唇から、彼の思いの深さが伝わってきたような気がして、
涙や色々なものが込み上げてくる。

それを全部押し込んで私は彼のなすがままになった。

そして、再び意識の淵から堕ちていった…
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