恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
「ところで…
本当に病院には行ってないんですか?」

私はしばらく答えられなかった。

「…行けないよ。怖い」

「なら、今から行きましょう。僕も付き添うので」

私の手を握って、目で訴える。

「倒れるぐらいこの時期よくあることだよ。ここで少し休んだら…」

「あのねひなさん、このまま無理したら結局倒れてみんなの迷惑になると思うんですけど…」

その時、ギーと扉の音がして彼が手を引っ込めた。

「相良君ちょっといいかな?」

カーテンの外から声がした。

「すみません。寝ていますがどうぞ」

声の主の田川課長がカーテンをめくって中に入ってきた。

「午後休をやるとまでは言えんが、とりあえず病院行って来い」

彼の後ろに立つ課長が、断固とした態度で私に向かって続けた。

「確かにこの時期にはありがちだが、この頃の相良君の顔色はあまりにも悪い。
原因をきちんと調べてこい」

課長はその後の私の反論を…
一切聞き入れなかった。そして、彼に向かって一言、

「引きずって行かないと行きそうにないな。佐々木君が連れて行きなさい」

「ありがとうございます。ご迷惑をかけます」

彼は課長に頭を下げた。

「無茶しすぎて鬱にでもなったら困るからな。じゃ、よろしく頼む」

課長はそれだけ言うと、手を振って仕事に戻っていった。
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