恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
「今日はどうしたの?なんかおどおどしてない?」

その言葉に胸をえぐられる…
彼にとっては無意識なんだろうけど…
やっぱり隠し事なんて無理なのだろうか。

でも知られたくない。もうこれ以上彼に心配をかけたくなかった。

「そうかな?日によって体調が変わるから、来週も働けるかなって思うとね…」

30代での思わぬ妊娠。正直同じようにしようとしても20代と違って、
身体が追いついて行かない。

「大丈夫。僕もそばにいるから…」

彼の腕が腰に回ってきて抱き寄せられる。それなのにこっちに擦り寄ってくる彼の
その温もりにただ身も心もすべてを委ねられたらどんなにいいのか…

でも私は自立した一人の女。自分の不始末は自分一人でカタを付けなければ…
彼の温もりを感じながらそれでも私は私だと思った。

しばらくそうして彼と温もりを分け合っていたが腰の腕が緩み彼が私にはにかんで微笑んだ。

「お願い…
ちょっとだけそのままで目をつぶって…」

私は、その笑顔の眩しさに目がくらみそうになる。
こんな彼が私の事をなんて今でも信じられない。目をつぶったらいなくなるのだろうか?

そう思いながら私は彼の言うとおり目を閉じた。
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