恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
しばらくごそごそ音がしていたが…
彼は私の左手を取って冷たいものを指に滑らせた。

…おそらくそれは指輪なのだろう。どうして今?彼に何があったのだろうか?

思い通りにいかない体調。不安定な関係。

それでも一人でこれを全て乗り越える自信なんて…
とっくにない。

いつこんな夢のような魔法が解けて、一人ぼっちになるのか…
今度その現実が襲ってきたら私はこの状態で耐えることができるのか…

いつもは抑え込んでいる感情が込み上げてきた。それは雫になって溢れだし私の頬を濡らす。

1粒1粒…
慣れないこの想いをどう処理したらいいのかわからない。

目を閉じたままの私の瞼に、そっと指が伸びてきて…
それから彼の唇が触れた。

その唇が離れた時、私はそっと目を開け彼を見つめた。
視界はぼやけてまともには見えない。

「もういいよって言おうと思ったら…」

そう言いながらまだ止まらない雫に指が伸びてくる。

「ごめんね。そうだよね。こんなあやふやじゃ不安だよね」

隣りに座った彼がもう一度私を引き寄せた。

「本当は、こんなところで、こんな時に渡すものじゃないんだろうけどね。
クリスマスはまだ怖くって贈れなかったから」

彼は、私の指輪を撫でながら続けた。
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