恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
「予約取ってたよね?」

彼はそれでは許してくれなかった。

「…忙しかったから」

「先週土曜日は休んでいたでしょ?忙しいからじゃない。
病院はきちんと行って。今度聞いても行ってなかったら僕もついていくよ」

「…うん。わかった」

お互い家族になるという覚悟を分かち合っても、私と彼の間には、
大きな大きな溝が立ちはだかっていた。

私の持っている全てを…
彼と分かち合うことは今までもこれからもないだろう。
それでももう彼なしで私は…


その話の後彼はいつものように実家に帰って行った。

私は指輪を触りながら、まだ、この流れに納得できていない自分がいた。

でもおそらく、彼はこのまま押し切るのだろう。

私に対しても両親に対しても…

自分の気持ちが揺れすぎて推し量れないまま、
私はその指輪を外しそれを持ったこぶしを胸で抱きしめた。

まずは、あの人と向き合わなければ、彼とのことにこたえる権利なんて私にはない。


そして、翌日の日曜日。

私は娘たちを夕方に迎えに行く約束をして、母に預けた。
帰り迎えに来るときに彼の話をしようかと思いながら…

それからとりあえず家に帰ろうと思い玄関でカギを挿しドアを開ける。

そこで後ろから突然家に押し込まれた。バタン。大きな音がしてドアが閉まる。

「なんで、あなたがここに」

暗い玄関を背に立つ男の、闇のような瞳に私は怯えるように後ずさった。
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