恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
部屋のあるフロアーにつき、カードキーで部屋に入る。

中は真っ暗だった。

つまり誰もいない。今日も私の方が早かったという事。

その辺りに持っていた荷物を投げ冷蔵庫から、

ミネラルウォーターを取りだして一気にあおり、

いつものようにベッドに腰掛け一息つく。

喉を通る冷たい感触に妙にさわやかさを感じた。

お酒も飲んでほろ酔い気分の火照った体には気持ちいい。


ここは眺めのいい部屋だったと思い、立ち上がりカーテンを開けてみた。

夜景がきれいだ。


「私、何してるんだろ…」

そのまましばらくぼ――っとする。


突然後ろから、温かい躰に捕えられた。

いつの間に入ってきたのだろう…

いつものあのフレグランス。見る必要もない。その匂いで誰だかわかる。

「まだシャワー浴びてないよ」

あの人はうなじに鼻を寄せてクンクンしている。

「いい匂い…」


「お酒飲んで汗かいてて、そんなにいい匂いじゃないと思うけど…」

振り返ろうとするが、強く抱きしめられ、身動きが取れなくなった。

「いいんだ。もう少しこのままで…」


彼は何かを思い出すように私を後ろからただ抱きしめていた。


しばらくして、抱擁する腕が緩んだので、

私は彼の腕から慎重に抜け出した。

目を見ながら、少しずつ離れたが、彼はただ夜景に目をやっていて

心ここに非ずという表情だった。


私は完全に離れても咎められることがなかったので、

そのままシャワーを浴びに行った。
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