恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
「助けて…
みずき君」

そうつぶやいた。口からつぶやきがこぼれてしまった。
その言葉に反応してあの人の目が一層見開かれ、色が濃くなる。

「そんなに佐々木がいいのか?お前、本気で佐々木がお前みたいなのを相手にすると
思ってるのか?」

あの人は私に冷たい嘲笑を投げつけ、片手にナイフを持ったまま、
無理矢理さらされた肌に唇を寄せる。

「ひな…ひな…」

その唇があちこちに触れさまよっている間、目を閉じた私は恐怖に震えは止まり
身動き一つできなかった。

「ひな…
こんなに愛してるのに。あんなに愛し合っていたのに…
俺たち相性は最高だったじゃないか…」

あれは愛じゃなかった…
あなたには愛なんかなかった…
私への愛なんて全然。

ただ私を弄んで楽しみたかっただけ…
ただ私の躰があなたの好みだっただけ…
ただ私の後ろにいる誰かを見つめていただけ…

ひと時の快感を手に入れるために犯した罪が今頃になって返ってくる…
因果応報。今更どんなに悔いても詫びてもなかったことにはならない。

私は暗闇の中、躰の力を抜いた。もうなるようにしかならない…

それなのに、私にのしかかっていた重みがふいになくなった。

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