恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】

執着

「また…

助けてくれたんだね」

私は震えの止まらない自分の身体を自分で抱いたまま、彼を見上げて頑張って微笑もうとした。

「ひな」

彼はその言葉を発してからナイフをその場に捨て、しゃがみ込むと私を強く抱きしめた。

息が上がったまま彼も震えている。私はゆっくりと彼の背中に腕を回してさすりながら、

「ごめんね。本当にごめんね…」

そう何度もつぶやいた。

「…ひな」

愛おしそうに囁かれる名前。本当にこんな私でいいのかわからなかった。

どんな時も何が起こっても彼は、まっすぐに私に向き合い、全力で私を守り、

そして…

私に執着した。私を手に入れるためなら、あの人を殺そうとするほど…


彼は私に愛され大切に慈しまれることの素晴らしさを教えてくれた。

その感情はお互いに与え合うことで、より愛しさが増し、

相手への優しさで自分自身の傷さえ癒される。


私は今まで、男女の仲にそういう感情は生まれないと思っていた。


母と父を見ても…

夫と私でも…

義父と義母はもってのほか…

そしてあの人と私にはギブテイクしかなかった…


そんなものが生まれるとしてもそれは他人の話で、私にはあり得ないと

諦めていたから…
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