恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
シャワーを浴びていると脱衣室で物音がして、しばらくすると目の前の扉が開いた。

お互いの視線が絡み合う。


「入るの?」

「だめか?」

「どうぞ。ちょうど浴槽に入るところだから…」

私は、あの人に背を向け浴槽をまたぎ浅いお湯に浸かった。

その動作を静かに見守っていたあの人は、

ゆっくりと壁際のシャワーに向かって座り、体を洗い始める。


浴室にはシャワーの音だけ。

基本的には私たちはお互いあまりしゃべる方ではないので、

必要以上の事は口にしない。

そういう時にはおんなの欲しがる言葉はいつも言ってくれる。

でも、愛してるなんて言うことはまずない。


だから二人でいるときにはこうやって静かな時間が多くなる。

変に気を使わないという点では本当に楽な付き合いだ。

「もう出るね」

私は頭にシャワーのお湯をかぶっているあの人の後ろを

すり抜けようとした。


「行くな。一緒に入ろう」

力強い手が私を引き留め、水を浴びまま私を見上げている。


その瞳はくすぶっていた。

私はごくりとつばを飲み込む。


おそらくもう…


逃げられない。
浴室には私の甘い声が響き渡ることになった。
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