恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
年度末に入籍するという報告のため実家に帰った時、

最終的に両親は許してくれたように思えた。

あれほど感情的になっていたはずの母も

父に任せた後はもう反対していなかった。

ただ父が2人きりになった時、「結婚はそんなに甘くない」と

戒めの意味を込めて父自身が抱える数十年の苦悩を告白してくれた。

それは男の大人の話。その話は…

苦くて甘くてしょっぱかった…

僕はそれを聞いて、父にかける言葉がなかった。


自分が人としても男としてもまだまだだということを思い知らされる。

流れた時間の重さと起きた事実を変えることのできない理不尽さ。

その話は以前からあった実家(うち)の中での違和感に、

納得できる答えではあったが…

父にとっては残酷というしかないものだった。

父はそれを抱えたまま、おそらくと知りながらでも、聞くこともできず、

真実を知ることも許されないまま、それでも母から離れられないという…

もし、僕がそんなことになったら、父と同じようにできるのだろうか?

父のように母を愛し続けることができるだろうか?

それとも…

それはあくまでも父の十字架。その時には僕は何があっても彼女に対して

誠実であり続けるしかないと思った。

まさか、そんな試練が僕の身にも降りかかるなんて…



【END】

「恋の賞味期限 愛の消費期限」2
―この先に待ち受けるもの―
(仮題)

に続く
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