恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
代行はどのくらいで来るだろうか?

5分?10分?


しばらく私はその場から動けなかった。


目の前でドアが静かに、でもはっきりと決別を示す様に…
バタンと閉まった。

その瞬間はっきりと今までのあやふやな自分を
拒絶された気持ちになった。


男なんて…
男なんて…どうせ裏切る。

そう、人は男女に限らず自分が一番大事なんだから。

だからこそ、もう裏切られたくないから、
あやふやでいい。不安定でもいい。
安心した瞬間に床が崩れるのが…一番怖い。

全てを明け渡してから落とされるのが何よりも辛く…
立ち直れない。

あんなことを言われても…
無理なんだから。

だって、無理なものは無理なんだから。




私の目からいつのまにか涙がこぼれていた。

いつからなんだろう?

彼が寂しそう顔をしていた時?

それ以外彼は終始笑顔だった。
あんなきついことを言いながら、私に向かって投げかける空気は
暖かかった。
最後の少し他人行儀な言葉をのぞいて…

あれが別れの言葉なんだろうか?

私は泣きながら、しばらく色々な事をぐるぐると考えていた。


ぐるぐると考えて…






とにかく追いかけようとそう思い、涙を手で拭うと
急いで、サンダルをひっかけ玄関から飛び出して行った。


こんなに走ったのはいつ振りだろうか?
全力で走ったのはあの人を追いかけた時…

階段を下り、駐車場を見渡す。

いつもの場所を視界にとらえると…
彼の車はまだそこにあった。




そして車の中に人影が見えた。まだ車の中にいる!

近づいてみると…
彼は静かに携帯の画面を見ていた。
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