恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】

彼の思い

私は自分がここにいるのを気が付いて欲しくて、車の窓を叩いた。

コンコンコンコンコン

思わず5回ノックして…

その回数の嫌な意味を思いだして…思わず苦笑する。

何も知らない彼が、その音に反応して顔を上げこちらを見上げた。

そして掌に持っていた携帯を閉じ、ゆっくりと車の窓を開ける。


「どうしました?」

「代行は?」

「…まだみたいですね」

「やっぱり帰るの?」

「はい。一人なので、こんな時間に帰っても
誰にも迷惑はかけないので」

表情はよくわからなかったが、言葉は冷たかった。
とりつくしまもなくてどうしようかと思っていると…



「乗りますか?」

そう言って、助手席をさしてきた。



私は、なぜ追ってきたのか、これからどうしたいのか

何も考えずに衝動的に走ってきたが…

いざ車に乗ってもそれ以上話すこともできなくて…

その重苦しい空気に呑まれそうになりながら、
ただ沈黙するしかなかった。
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