恋の賞味期限 愛の消費期限(Berry’s版)【完】
「そんなことはないです。
僕はいろいろ苦労してきた、今のひなさんだから好きなんです。
むしろ問題なのはひなさんではなく…」



「問題?何か問題があるの?」

彼は、その言葉を聞いたとたんに私から視線を逸らした。


「みずき君は私に思っていることは言葉にしないと
わからないって言うのに、どうして言わないの?」


「それは…」

いつものはっきりした彼ではない。歯切れの悪い言葉。
あいまいな態度。彼にも言いたくないことくらいあるよね…
お互い何でもさらけ出す必要はない。私だって彼に言えない…
そんなことは山ほどある。
それきり二人ともしばらく何も言えなくなる。

私は彼の気持ちに理解を示そうと
「あのね、誰だって言いたくない事く…「ぼくないんです!!」」

彼が目をつぶったまま私の会話にかぶせてきた。

「ない?」

私は訳が分からずに何気なくそう聞いていた。

「そう、まだないんです…」

今度は俯いて消えそうな声で囁いた。



「もしかしてみずき君…」

私は思い当たることがあり、彼を見つめると
彼はばつが悪そうにうなずいた。







「えっ?もしかして付き合ったことも?」

「いや、まさかさすがにそれはないです。
自慢するほどはいませんが…
ただ、それも、あくまで付き合っていただけで…
引くでしょう?」
< 85 / 195 >

この作品をシェア

pagetop