「わかってるってば」
「うちの部屋は601。角部屋だから覚えやすいよね。お隣はおばあちゃんで、

たま~に出てくるからよろしくね。」

「ねえねえ・・・聞いてんの?」ゆうきはどうでもいい話の時はうつむいたままだった。

「まあ・・・入って」

玄関を開けると、窓を開けっ放しだったのか、風が勢いよく吹き抜けて・・・

フワッと・・・その風はゆうきの髪を吹きつけた。

「うわ・・・」

私は振り向くも、ゆうきの顔にふと見とれてしまう・・・

「ダメダメ・・・」

2人きり・・・

その青年はまぎれもなくイケメンで・・・

「ゆうき・・・」私は心の中でそう叫んでしまった。

柏木くん。我に返った私は、

「柏木くんは女性の部屋って入ったことある?」私は、またまた、どうでもよい質問を

してしまった。

「彼女いますから・・・」即答・・・泣

「あーーーそうだよねーー。」・・・くっ・・くやしい・・・

「今回私の担当でも大丈夫なの~?」ダメ押しの一手。

「仕事なんで・・・」柏木くんの速攻は痛いよーー。

「では・・・」私は、もう打つ手なくして、淡々と仕事の打ち合わせをした。

うんうん。とうなずく柏木くん。

メモも取らずに・・・大丈夫か・・・

すかさず取り出したのは、スマホ。

待ち受けには・・・彼女との写真が使われ、

「可愛い彼女~・・・」

この男の現在を見せつけられた私、

「そうだよね・・・」

ちょっと、浮かれてた自分に

やけに自分にムカついた。

「ねぇ・・・柏木くん。読者が潤う作品。潤うってどんなこと?」

「涙で潤うとか・・・心が潤うとか・・・ってことじゃないんですか?」

「柏木くんは最近潤ってるの?」・・・なんだこの会話は・・・

「うーーん。」さすがに考え込む彼。

「まぁ・・・若いっていいわよね」

ハア・・・・ますます、ゆうきを苛めたくなる自分。もうどうにかして・・・って感じだった。



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