不良の菅原くんについて。
「お前が中村榛?」
中庭に出ると、菅原くんが私の足音に気付いたのかゆったり振り返った。
強く吹き付ける風に、顔にかかった髪を耳にかけながら、
「うん。私のだよ」
自分なりに微笑んで言えた、………はず。
そんな私を、菅原くんはまじまじと見下ろしてきた。
「プリント、ありがとう」
「………ほら」
うわ、指細。でもゴツゴツしてる。
男の子だなー。
近くで見ると、彼は本当に背が高いことが分かった。
私も160でそんなに小さくないけど、それでも菅原くんとは頭半分以上違う。
「えと、あの………何で私の名前、知ってたの?」
気まずいから、話を振ってみる。
「進路調査」
「え?」
「名前、書いてあるだろ。“中村榛”って」