不良の菅原くんについて。
「中村」
「ヒィッ!」
背後からかかった声に悲鳴を上げた。
正面で沙耶が呆れた顔で私を見ている。
ちょっとオーバーだったかな。
「ごめんごめん……」と言いかけて、
目に入った姿に、「ぎゃあぁっ」と更にオーバーな悲鳴を上げた。
「何だよ」
「すっ、菅原くん?!」
背後にいたのは菅原くんだった。
ポケットに手を突っ込んだまま、パックのジュースのストローを食わえて、
平然と私を見下ろしている。
沙耶も何事かと目を見開いていた。
「なっ、何っ?」
「昼飯、一緒に食おう」
「はぁ?」
いきなり何かと思えば、何だ。
「昼飯って…………私もう食べちゃったよ?
昼休みあと十分しかないし」
「じゃあ、付き合え」
「なんで私ぃぃ?!」
「彼女だろ」
「何にも言ってないんだけど!」
そんな事を言う私の腕を、菅原くんは強引に引っ張って、引きずって、教室から出た。
沙耶はひらひらと手を振りながら、またスマホに視線を落とした。
───覚えとけぇぇ!!
私は半泣きになりながら、そのまま屋上まで引きずられて行った。