不良の菅原くんについて。
あれから二週間。
季節は春から夏、に入る前の梅雨、の前の微妙な時になり、
進級した喜びも、クラス替えの余韻も、すっかり薄れさった頃。
「なぁ中村。デートしないか」
もはや習慣となった、昼休み恒例 【誘拐からお食事】の時間。
「…………はい?」
卵焼きを口に含みながら、私は眉間にシワを寄せた。
「何でそんな話になったの?1秒前まで私たち、もっと別の話してなかったっけ?」
「話が変わるのなんかいつだって唐突だろ?」
「いや、でも変わりすぎだと思うけど」
ゴクリと口の中のものを飲み込んで、菅原くんの真意を探るようにじっと見つめる。
途端に彼は顔を赤らめて、
「な、ジロジロ見てんじゃねぇよ」
とか恥ずかしそうに顔を背けた。
「…………」
いきなり告白してきたり無理やり誘拐したりしてるくせに、
変なとこで純情だから菅原くんはやりにくい。
この二週間一緒にお昼を過ごして分かったこと。
それは菅原少年が純情少年だったという事だ。