桜色ノ恋謌
「……忘れ物、取りに来ただけ……」

「じゃあ取ってくれば?」


月島くんに言われて、あたしはいそいそとタンクの上のバッグを取ってきた。


良かった。イタズラされてないや。



「あのさ。忘れ物がタンクの上って何やっててそうなるんだよ?」

「……関係ないし。放っといて」

「『関係ない』か。………なんか《凜》の台詞みてーだな」




凜。あたしがやった主人公。


その相手役と、まさか同じクラスだったなんてね。


なんだか不思議だ。





「そう言や《ぷれしゃすっ!》の映画、冬辺りから始めるってさ」

「あ、それ聞いてないや」


高橋さんから近いうちに聞かされるかな?

まだあたしには教えたくないんだろうか?



一人で悶々としていたら鍵を回す音がして、担任がドアを開けてくれた。


「じゃー帰って寝るわ。センセー俺早退ね」

「気をつけて帰るんだよー」




………は?何この教師。



「如月さん…は、帰らないのかな?」

「帰ってほしいんですか?」

「あ、いや!あの教室は居心地が悪かろうと思ってね」


あたしがクラスの厄介者だから帰れっての !? 冗談じゃない!


「帰りませんよ。授業受けます」



卑屈な担任を睨みながら階段を駆け降りた。


いい大人のくせに、ばっかみたい!



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