桜色ノ恋謌
で。………どこだ、ここは。



あたしが行きたいのは駐車場だからして、えーと。………局内の地図ってないの?



また迷った。


ここ、どこ?




さすがに焦ってしまい、通りかかる人に場所を聞こうとしてるのにこんな時に限って誰も来ない。



使われていない会議室や企画室みたいな感じのドアが並んでる。



ドアの一つから聞こえてきた声に、耳を疑った。




「……落ち着いて……」



忘れてない。


2年間、毎日聞き続けてきたんだから。



「陽菜乃は大丈夫、だから」



昂くんだ。



昂くん、今『陽菜乃』って言った?



……今は手塚陽菜乃ちゃんのマネージャーさんなの?




あたしが《shelly》のオーディションに優勝した時、トロフィーを渡してくれた陽菜乃ちゃん。



陽菜乃ちゃんのマネージメントだって大変そうなのに、きちんと仕事出来てるのかな?



「昂。お願い」

「……それは、駄目…だ…」



これ以上ここに居たらいけない気がする。

それなのに、足が縫い付けられたように動かない。



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