桜色ノ恋謌
そして始まる無礼講。


大人達4人は日本酒やらワインやらをごちゃ混ぜに飲んで何を喋っているのか分からなくなってきてる。



恭哉くんはと言うと、ちゃっかりお酒は辞退していた。



「飲まないの?」

「ここで飲んだら大変な事になるじゃん。長々と捕まって、延々と子供時代の恥ずかしい話をされるんだから」



……そりゃ嫌だわ。



「つーわけで逃げようか?」

「逃げるってどこに?」

「俺の部屋でいい?」

「う…。いい、けど……」



何年も行ってなかった恭哉くんの部屋、緊張する!


「行こう」


差し出された手を、後ろめたく思うことなく握り返した。




あたしの首に、あのネックレスはもう飾られてはいない。



……昂くんへの想いは、まだ過去のものにはなっていないけど。


だけど。


あの時の様子からして、昂くんが陽菜乃ちゃんとはただの仕事上の付き合いだけをしているようには見えなくて。


昂くんが陽菜乃ちゃんに、気持ちがあるのかは分からない。



それが分からないから……今のあたしに気持ちを伝えてくる恭哉くんに傾いている。


卑怯だって分かってる。


でも、恭哉くんがいてくれたから、あたしはまた前みたいに笑えるようになったんだ。


……昂くんの事は、諦めなきゃいけないのかな……。




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