桜色ノ恋謌
――空き教室に駆け込む《凜》。

窓辺にもたれて、素直になれない《行人》への想いを語る。


『私には、行人しかいないのに……』

天の邪鬼な性格ゆえに、面と向かって言えない言葉を漏らす。


『好き……なの。行人……』


《凜》を探して息を切らしながら空き教室に走ってくる《行人》。


《凜》の前に立ち、その手を握って力説する《行人》。

『お前……。誤解してんじゃねぇよ!俺が側にいたいのは、お前しかいない。……信じろよ!』


……ここで羽交い締めにされるなんて聞いてないんですけど。こいつアドリブ入れてきたな……?


『他の子のところに行っちゃ、やだよ……?』


上目遣いで《行人》の制服の裾を握り、《行人》を見上げる《凜》。……ただしこんなのは台本には載ってない。


どうだ!あたしもアドリブで、いつもはツンデレのツンしか見せない《凜》をデレさせてみたわ!


『……お前のここに誓うよ』


そう言って《凜》の左手の薬指にキスを落とす《行人》。


二人、笑いあったところで……。



「おっし !! やりゃあ出来るんじゃねーか!」

「あざーす」


ほっ。どうやらOKもらえたみたいだ。

あたしはどうだったのかな?


画をチェックしてみたけど、前よりかなり良くなっていた。



「《凜》もデレを上手くつかったな!良かったよ。さぁ時間が圧してんぞ!ちゃっちゃとやっちまおう!」


「ハイ!」の声は、現場のそこここから聞こえてきた。



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