桜色ノ恋謌
「和生 !? あんた何してんの !?」


そこにいたのは弟の和生と恭哉…だった。



「姉ちゃん遅いー。もう9時じゃん。友達に姉ちゃんのサイン頼まれて来たんだけど、この色紙に早くサインして」


どこの悪質商法だ !?



「ねぇ。どうやって入ったの?」


サインをしながら二人に聞いた。


「別に俺家族だし。予備のカードキー持ってるし。ここのコンシェルジュは俺の事知ってるだろ?」

「はぁ……」



確かに、お母さんと一緒にたまに和生もここには遊びに来るから、コンシェルジュも知らなくはないだろうけど……。



プライバシーも何もあったもんじゃないな。


「恭哉兄ちゃんが車で連れてきてくれた」

「いや、和生が咲絢のマンションに行くって言うから……」

「恭哉兄ちゃんも来たがってたじゃん、姉ちゃんとこ。どっちかっつーと俺がおまけの方だろ」

「まあ……。それは、なぁ…」


……和生を使ってまで、あたしに逢いに来てくれたの……。



「はいサインしたよ。何か飲む?」


油性マジックを置いてキッチンへと向かいつつ二人に聞いた。


「悪いな。コーヒーをブラックで」


恭哉は部屋を落ち着かない様子で見回して、そう注文した。


和生の「俺焼酎ね」というリクエストは無視した。



「で、仕事大変なの、姉ちゃん」


珍しいな。和生が仕事の話をするなんて。


「大変ではないけど。共演者がムカつく」

「月島翔大だっけ?人気出てきたよな」



なんであんな奴が人気あるのか理解できないけど。



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