桜色ノ恋謌
今日は《リン》の格好で、観覧車を使った遊園地でのロケ。


この姿で冬のロケは正直言って辛い。何せ生足。せめてタイツぐらい履かせてほしい。



月島くんは現場では相変わらずあたしに付きまとってくる。


そりゃーもう気が休まる暇もないくらいに。



「休憩入りまーす」



はー寒い。


高橋さんから厚手のロングコートを受け取り、それを羽織るとあたしは椅子に座る。

高橋さんはかかってきた電話に出るために席を外した。


「……なぁ。俺リアルキスマ、初めて見たわ」


は?


「何言ってんの、月島くん?」


椅子を引きずって来てあたしの横に座る月島くんを、不思議そうに見た。


「太もも。見えてんだけど」


キスマーク、と耳元で囁かれたあたしは文字通り飛び上がった。



「それ、彼氏?」

「どっ…どこ見てんの!てか、月島くんの方が凄いんでしょ !?」



だって前に言ってたじゃん!俺はすげぇ、みたいな事!



「あーやっぱ認めるんだ。顔真っ赤だしな。で、彼氏どんなヤツ?つーか太ももにキスマって」


なんであんたに言わなきゃいけないの !?


「……月島くんに関係ないってば。ほっといてよ」


からかわれるのが嫌で、そっぽを向いた。



「そりゃそうなんだけどさ。芸能人と一般人の交際って、あんまり上手くいかねーって知ってる?」

「……知らない。そんな事ないもん」

「あー、相手は一般人なんだ?」



……月島くんの誘導に引っ掛かった !! なんか悔しい!


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