桜色ノ恋謌
男の人と付き合った事がないあたしには、恭哉に何と言葉をかければ良いのかが分からない。



恭哉と二人で、ただ寄り添っていたいだけなのに……。



月島くんに付きまとわれて辟易した感しか残さなかった《ぷれしゃすっ!THE MOVIE》も、後は編集作業を残して公開を待つばかりとなった。



あの衣装ともお別れかと思うと、少し寂しい。



仕事の方は、単発で雑誌やCM が何本か入ってるぐらい。


去年から今年の前半は全力疾走で駆け抜けた感じの1年だったから、そろそろ休みたい。つーか体を休めたい。


それに何より、恭哉との時間がほしい!



「今のところは大きな仕事は入っていないから、久し振りに明日から学校に行ってちょうだい」


高橋さんに言われて頷いた。


学校に行くのは久し振りだけど、まだ嫌がらせやイジメみたいなことされるのかな……?



マンションに戻ってすぐに携帯が鳴った。


恭哉からの「下に着いた」の合図だ。



荷物を置いて、あたしは着替えずに外に飛び出す。




「……学校行くのか。心配なんだけど」

「ありがと。だけどもう大丈夫だよ」


恭哉にコーヒーを渡しながら、笑顔で応えた。


「月島と一緒のクラスなんだろ?すっげー嫌だ」


拗ねる恭哉を見るのは初めてかも。


あたしが生まれた時からだから、長い付き合いなんだけどこんな恭哉は見たことない。



「……何?」


あたしがじーっと眺めているのに気づいて、不機嫌そうに唸った。



「恭哉が、可愛いなぁと思って」

「……可愛いかどうか、試してみる?」




……そしてまた、こういう流れになるんだよね。


最初の何回かに比べれば痛くなくなったけど。



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