桜色ノ恋謌
確か、最近人気が出てきた手塚陽菜乃とか山下エリナなんかがその雑誌からデビューしたんじゃなかったっけ?


………おいマジで?


生まれた時から俺の後にくっついてた咲絢がモデルになんのか?


「………嘘だろ」


冗談キツいって。



「嘘じゃないわよ!だって今朝事務所の社長さん達が如月さん家に来て契約書にサインしたって言ってたもの。ねー、咲絢ちゃんも陽菜乃ちゃんみたいにCMとかドラマに出たりするのかしら?やだ、芸能人のサイン頼まないと!」



お気に入りの俳優の名前を指折り数えだしたおふくろはとりあえず放置。

つか、その歳で10代のイケメンアイドルにうつつをぬかす姿は間抜けに見える。



じゃなくて!



「アイツまだ中学生だろ !? 芸能界なんて汚い世界でやってけるはずねーじゃん !!」


おふくろがぽかんと口を開けて俺を見上げた。


「だって咲絢ちゃんの意志は堅いみたいよ?如月さん達も渋々だけど納得したみたいだけど……。なんであんたが怒ってるの?」


埒があかねぇ。


「えっ、ちょっと恭哉 !? どこ行くの !?」


おふくろの声を無視して、俺は隣の家に駆け込んだ。



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