桜色ノ恋謌
そして夕食を摂ってから、CM撮りのために別のスタジオへ。


CMは、子役の子と私が《姉妹でクッキーを作る》というイメージ。



クッキーを作るにしては、衣装がやたらポップ過ぎるというか、原宿系というか。


メイクを終えると、これでお菓子を作る人はまずいないだろう、というようなパステルカラーの衣装に着替えた。



スタジオに入るとキッチンのセットの前に、競演する子役の子が立って大人達から説明を受けている。


この子は、ゆいちゃん。

まだ7才だけど、前に出たドラマでかなり人気が出てきたみたい。



「あっ、《リン》ちゃんだ!」


私をみつけたゆいちゃんが、私の方に駆け寄ってきた。


「如月さん、すみません!ゆい、ちゃんとご挨拶して!」



ゆいちゃんのマネージャーさんらしい人がヒステリックに怒鳴った。



「ゆいちゃん、こんにちは。もしかして《ぷれしゃすっ!》観てくれてたの?」


ゆいちゃんがあんまり可愛いもんだから、私はしゃがんで目線を合わせて頭を撫でた。



「ゆいねー、リンちゃんのマネできるよ!」

「すみません、いつもは敬語を使えるんですけど、ゆいは《リン》ちゃんの大ファンでして……。手塚さんから如月さんに替わったと聞いたら興奮してしまって……」


ゆいちゃんのお母さんらしい人が私の横で謝罪した。


「そんなことないです。嬉しいなー。私もゆいちゃん大好きだよー!」


うん、ゆいちゃんは可愛い。癒される。


こういう仕事なら大歓迎なのにな、と、高橋さんの方を見て……固まった。









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