桜色ノ恋謌
………昂くんが、高橋さんの隣に立っている……。



「……さあやちゃん、どうしたの?」

ゆいちゃんに言われて我にかえった。


「なんでもないよ。今日は頑張ろうね」


にこっと笑うと、ゆいちゃんも笑い返してくれた。



私の役が好きだと言ってくれた、ゆいちゃんの前で変な演技は見せられないよ。ちゃんとやらないと。



私は昂くんの存在を忘れて、撮影に挑んだ。


……それでも動揺が隠せなかったのか、何回かは撮り直しが入ったけど。



ようやく全部が撮り終わった時にはホッとため息をついた。


「ごめんね、調子が悪くて……」

申し訳なくてゆいちゃんに謝ると、ゆいちゃんはにっこり笑った。


「リンちゃんと一緒に仕事ができて、ゆい、嬉しいよ!」


なんて良い子だろう!


思わず小麦粉だらけの衣装のまま、ぎゅーっとゆいちゃんを抱きしめた。


この子可愛い!こんな妹ほしい!



「……そういう顔すると、昔と変わっていないって思うよな。咲絢」









いきなり私に話かけてきたのは、昂くん……―――。
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