桜色ノ恋謌
昔の咲絢からは考えられない、艶かしい声が俺の思考を奪う。
咲絢、その男とどこまでしたんだよ?
そんな声出すなよ。
……なんで……。
「やっ……!駄目!」
咲絢は渾身の力で俺を押し返した。
駄目なのかよ?
もう遅いのか?
「陽菜乃の事はどうにかする」
頼むから。
また咲絢の心を、俺に……。
「……もう、遅いよ!遅すぎたよ。……昂くん……」
なら、なんで泣くんだよ。
俺に気持ちがないなら、なんで泣いてんだよ。
「昔も今も変わらない。俺が好きなのは、咲絢だけだから。陽菜乃とのキスは合意の上じゃない」
「なんでっ……!だって、私にはいるのに……っ!」
好きな人が、と泣き崩れる咲絢を見下ろして切なくなった。
そんなのは関係ない。だったら奪いにいく。
「全部ケリをつけたら、その時は……迎えに行く、から」
待ってろよ。先に行くなよ。
「咲絢しか、いらない」
だから、君の心をもう一度、俺の元に……―――。