桜色ノ恋謌
ガンガンっとドアが叩かれた。


「恭、哉……?」

「咲絢、いるのか !?」


恭哉が来てくれた……!


急いでドアを開けて、その広い胸に飛び込んだ。


「恭哉っ!恭哉……」

「落ち着けよ。何があった?」


答えは見つからなくて、ただ私は恭哉の胸にすがって泣くしかできない。



「まずは落ち着いて。何があったか、ゆっくり話せるか?」


恭哉の膝の上に乗せられて、言葉を一言一言ゆっくりかけられると、それだけで恭哉の優しさに包まれる。



さっき私を乱した昂くんの香りとは違う、恭哉の香り。体温。


それが私を落ち着かせる。



「……元マネにね、逢ったの………」


恭哉がハッと息を飲むのが分かった。


「……それで、何かされた……?」



答えを言いたくないのは、私がそれを嫌だと思わなかったから……。


「……咲絢から、香水の匂いがする……」


心臓を掴まれたように胸が痛い。


「どこまでされた?」


恭哉に答えるのが、怖い。



「……何も……」

「嘘だろ?何かされただろ?」


怖いよ。恭哉が怒ってる……。


怒らないで。


………私だって、どうすればいいのか分からないんだから。


「キス、された……」

「ちっ」


舌打ちをした恭哉が私を荒々しく寝室に運んで、ベッドの上に放り投げた。




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