桜色ノ恋謌
翌朝、高橋さんに一番最初に言った言葉が「私、やります!」だった。


鉄壁の女、さすがの高橋さんもこれには唖然として口を開けたままだったけど、瞬時にいつもの鉄仮面に戻ると私に言った。



「……やるだけ、やってみましょう?」


出演予定の人々を見ても、私が役者不足なのは自分でも分かっている。


高橋さんだって、きっとそれは感じてる。


だけど、やるって決めたんだ。




「…… 『脚本が出来て、キャスティングが決まれば、 映画はほとんど上がったも同然』と言う制作関係者もいるぐらいだもの。咲絢は選ばれたのだから、このチャンスをモノにして?」



高橋さんが、恭哉と同じことを言っている。


私は元気よく頷いた。



「記者会見は来月の10日。公開日などは顔合わせの時にチーフから説明されるはずよ」


「分かりました。高橋さん、資料を集めをお願いしてもいいですか?」



時代背景を知るために、資料集めは欠かせない。



《和宮》の人物像を掴むこと。



そこで、ふと考えた。




……もし桜小路さんが《天璋院》を引き受けるのなら、どんな役作りをしてくるんだろうか……。




< 198 / 394 >

この作品をシェア

pagetop