桜色ノ恋謌
「次、いきます!」


チーフ助監督の掛け声でキャストが集まる。


次は《有栖川宮》が《和宮》に和歌を教えるシーンだ。



ちなみに今の私の格好だけども、勿論小袿を着ているわけで。……重い。歩きづらいしカツラは重いし肩が凝りそう。


その点男の人達は楽そうでいいなぁ。



「大変でしょ、時代劇は」


倉木さんがふにゃっと笑って話しかけてきた。


「着物なんて着たことないですから……。大変ですね」


私もへらっと笑おうとしたけど、何しろカツラを被るために髪の毛をぎちぎちに引っ張っているから、ひきつった笑顔しか出てこない。


「如月さんの、今のマネは誰?」

「高橋さん、ですけど」


それがどうかしました?みたいな感じで私は倉木さんを見た。




なんで私のマネージャーが気になるんだろ?



「……そっか。琴子、相変わらず仕事の鬼でしょ?俺がデビューしたときについてたマネージャーが琴子なんだよね。懐かしいな」

「高橋さんって、倉木さんのマネージャーもやったんですか !?」




つくづく高橋さんってすごい人なんだな…と思う。でも、相変わらず高橋さんの人を寄せ付けない壁は、未だに崩せてないけどね。





「本番いきます!」


助監督の声で我に返った。



暫くはこのロケ地に詰めっきりだ。





恭哉と逢えないのは寂しいけど、恭哉も応援してくれてるんだから頑張ろう。









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