桜色ノ恋謌
「はいカットぉ !!」


監督にOKを貰って、みんなで集まりモニタリングをしてみる。

うん、問題なさそうだね。



「如月さんはお兄さんがいるの?随分甘えるの上手いよね」


苦笑まじりに倉木さんがそんな事を言い出した。


「私は弟ならいますけど……」


お兄さんっていったら……。恭哉にいつも甘えてるから、なのかな?




「……《和宮》にとっての《有栖川宮》って、どんな存在だったんだろうね……」


倉木さんが唐突に聞いてきた。



えっ?えっ?これも役作りのためとか言う?



「やっぱり11才も年が離れているから、お兄さんみたいな存在かなー…って思って演じてますけど……」


倉木さんと私は親子ほども年が離れてる。だから、〔お父さん〕に近い感じがするんだけどな。



「《有栖川宮》はさ、最終的には《和宮》とは敵対する立場になるでしょ?その《有栖川宮》が朝廷軍の総帥として江戸城に迫った時、噂が流れたんだって」

「どんな噂ですか?」

「《和宮》を幕府…《家茂》に取られた《有栖川宮》が、好きな女を盗った幕府を憎んで倒幕の急先鋒に立ったんだって噂。《和宮》も《有栖川宮》も、お互いに好い感情は持ってただろうから、悲恋だよね」

「悲恋……ですか」


でも《和宮》は江戸に入ってからは、同じ年の《家茂》とは仲良くラブラブになったはずだけど。





「『落ちていく 身を知りながら紅葉ばの 人なつかしく こがれこそすれ』………結局は好きな人と一緒になるのが一番いいのにね」



大庭さんが《有栖川宮》の事を言っているのか、自分の事を言っているのかは分からない。



私はただ曖昧に「そうですよね」というより他になかった。
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