桜色ノ恋謌
「スタート!」





そしていよいよ監督が合図を出した。





《天璋院》とそのお付き達は、江戸のしきたりに反抗して御所風の生活を変えない《和宮》に対してキツくあたる。






輿入れしてきた《和宮》が《天璋院》の元に挨拶に行く、そのシーンからの撮影だ。





《天璋院》が駐在する御上段に挨拶に伺う《和宮》。



だが、部屋に入った《和宮》と侍女中は、上座に座ったまま会釈も礼もしない《天璋院》の態度に戸惑いを隠せない。


その上、下座に座らされた《和宮》の座には敷物も用意されていなかった。


それまで《和宮》の上座に座るのは帝だけだったのに、だ。




《和宮》を女中達と同じ扱いにする《天璋院》の仕打ちに、怒りを覚える和宮付きの侍女中達。



堪りかねた侍女中は『宮様に対して無礼であろう!』といきり立つ。



それに対して《天璋院》の侍女中が反論する。


『先に和宮様より贈られ申したご挨拶の品には尊称、付けられておられませぬのう?なんぞの相違かと思うたが如何様(いかよう)なご事情ありての事でござりまするか?』


『眉も描かれておりませぬ』



そう言って、ほほ…と冷笑を浮かべ御所育ちの《和宮》を馬鹿にする《天璋院》と侍女達。




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