桜色ノ恋謌
「今使ってるロケ地はね、国営放送が発起人になって造った大河ドラマ専用のロケ地なの。京都にもあるけどここは地元の人達でエキストラの会も結成されているし、人の目が都会より少ないから、安心なのよね」

「はあ…そうなんですか?」

「それに、私、前からこの店と賢治の記念館に行ってみたかったの……」

「そ…ですか…」


でも、なんで私を誘うわけ?取り巻き達でも良くない?



「……疲れるのよね……」


ぽつりと漏らした桜小路さんの一言を、私は聞き逃さなかった。


「桜小路さんが、疲れる…ですか?」


だってあれだけいつもピシッとしてる人が、なんで疲れるなんて……。


「……1年の時、私の回りの人達が如月さんに嫌がらせしていたのよね?……知っていたけど、どうにもできなかった。私が不用意に『如月さんも挨拶ぐらいしてほしいわ』っていったから……」

「……今は、そんなに……」


気にしてないって言えば嘘になるけど。


「 誰もが私の顔色を伺って…私はママの顔色を伺って……。その悪循環の繰り返し。気を許す暇も、気を許せる人もいないの……」

「でも桜小路さんには、お友達がいっぱいいるんじゃ……」

「お友達なんかじゃないわよ。見れば分かるでしょ?対等な立場での付き合いじゃないってことぐらい」



それは、まあ確かに。『手下』にしか見えなくもない。


……意外。


桜小路さんもこんな事で悩んだりするんだ……。



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