桜色ノ恋謌
「……この話は、後でじっくり話しましょう。次に、あなたが学校で苛められてたという話だけど。あのクラスでイジメられていたの?相手は誰?」

「それはもういいです。解決して、相手とは仲良く出来るようになったし」



公佳ちゃんとは今では現場では特に仲良くさせて貰ってるし、学校に戻っても多分大丈夫だろうと思う。



「そういう訳にはいかないわ。あのクラスでトラブルがあった場合、仕事に差し支え……」

「大丈夫です。問題ありません」


今までのいざこざが全部水に流れたとは思ってないけど、公佳ちゃんとは普通に話せるような仲になったし。


もう学校に行っても、問題ないよね。恭哉のおかげで乗り切れた、っていうのもあるけど。



「……相手が誰か、だけでも……」

「もう済んだことです。お互い水に流して友達になれたんだから、いいじゃないですか」



高橋さんの方が歯切れが悪くて私が切り口上なんて珍しいな、と、ふと感じた。


いつもなら切りつけるような言い方をするのは高橋さんの方で、私はただ黙って頷いてるかこっそり反発してるだけなのに。


昨日の倉木さんとのやり取りは、いくら鉄仮面の高橋さんにとってもダメージを避けられなかったんだなーと知る。


……違う。


仕事人間の高橋さんを作り出したのが、倉木さんとの【悲恋】なんだね。


倉木さん自身が言ってた【悲恋】は、和宮のことじゃない、倉木さんと高橋さん、二人の恋を指して言ってたんだ……。




「……もうその話しはいいじゃないですか。それに、高橋さんが話し合うべき人は私じゃないですよね?」

「……それは……」


私は立ち上がって、尚も食い下がろうとする高橋さんを見下ろして言い切った。


「……高橋さんが、倉木さんと素直な気持ちで話し合うことができたら、私も高橋さんを信じて今までの事を全部話します。高橋さんが素直にならないのに、私にだけそれを強要するのは違うと思う」




結局、ずっと項垂れたままだった高橋さんとは、撮影に入るまで一言も話さなかった。





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