桜色ノ恋謌
ああいうパーティは窮屈だから、できれば出たくないなぁ。でも、仕事だと言われればそれは出なきゃいけないんだけどさ。



「今度の金曜日よ。ドレスは…あるわよね?」

「昨日《Too 》の秋物の新作を何点か買いましたけど……」

正確には《Too 》の営業さんに買わされた、って感じで買ったんだけどね。


だって「業界人だけに斡旋しています」とか言われて服を見せてもらったら、あまりにも可愛かったんだもん。


それに、映画が完成したら試写会があるし、地方を回らなきゃなんないから、服は持ってないとダメだし。

だから、パーティ用のドレスは新調したけど、改まった席に出席する場が増えるのは億劫なんですけどねぇ……。


「それなら大丈夫ね。パーティは夜の7時からだから」

「すぐ抜けるんですよね?パーティ」


あの手のパーティは、新人さんや仕事が欲しい人達が、偉い人達に必死になって自分を売り込む為のパーティだもん。

今更私が出ていったら、そういう人達のチャンスを潰しかねないから、できれば遠慮したい。……というのが本音。

妬まれても嫌だし。



「そうね。あなたの用事が済めば、すぐに帰れるわ」

高橋さんの言葉に安心した。




良かったー!すぐに帰れるんだ。



でも、パーティで私に《用事》ってなんだろね?


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