桜色ノ恋謌
「ついたわよ、カラオケ。終わったら電話して?」

「はい、帰りもお願いします」




パーティの仕事の内容はよく分からないけど、その時になったらいつも通りにこなせばいいだけだよね。




高橋さんにぺこりと頭を下げて車を降りた。



私の後ろで走り去る車の音を聞きながら、待ち合わせのカラオケボックスの建物の前に行ってみる。







艶やかな長い黒髪をお下げにして、どこで買ったのかは知らないけど今時瓶底眼鏡をかけた女の子が立っているんですけど。

しかも着ている服が3枚で1000円位の安いリサイクル品。

よれよれのダメージジーンズにおっきなパーカー。

そしてオタクが持っていそうな、大きな紙袋。




だけど!服はリサイクルなのに、着ている人のオーラが違う!



やだ、ちょっと、まさか!! てゆーか変装で負けたよ!!



「……もしかして、公佳ちゃん……?」

「咲絢?……なんだ、普通の格好してきたのね。つまんない」


つまんないって、地味比べしようなんて聞いてないけど!


けどこれ、月島くんや大地くんがなんて言うのかなぁ。


絶対にバカにされそう。


「勘違いしないでね。部屋に入ったらちゃんとした格好にするわよ。この下にだって、キャミワンピだって来てきたんだから」

「その髪もウィッグなの?私も、だけど……」


よくこんなダサダサなウィッグがあったよね。私も一つ欲しいかな。



「……お前ら、何?ギャグ?」


きゃいきゃいとはしゃぐ私達の後ろから声がして振り返った。



……なんでだよ。


なんでコイツら変装してきてないのよ。



見なさいよ、アンタ達の回りに女の子のファンが群れ集ってるじゃない!


「芸能人ですけど何か?」みたいなドヤ顔で、街を闊歩するコイツらとはやっぱ関わり合いたくない。
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