桜色ノ恋謌
■左指の鎖
「なんで…!」
聞きたいことも言いたいことも一杯あるのに、私の思考回路はショートしてしまったように働かない。
「悪い。今まで連絡できなくて。だけど、ようやくこれで、咲絢の隣に俺が立っていても、誰にも文句は言えなくなったんだ。今まで……」
恭哉はくるん、と私の体を向かい合わせて、頬を両手で挟み込んだ。
「必死で頑張ってきた。俺も、咲絢の声が聞きたかった。逢いたかった。我慢してたんだ……」
「恭哉……」
広い胸に体を預けて、久しぶりに恭哉の香りに包まれた。
恭哉の声が、掠れて切なく揺れている。
不思議だよ。
もう何も聞かなくても、恭哉の一言一言を聞くだけで安心が胸の靄を晴らしていくなんて。
できればずっと、こうしていたいよ……。
私を抱き締めたまま、恭哉がポツリと言った。
「今日はこのホテルに部屋を取っている。咲絢の事務所の社長も了解済みだから。……咲絢、…いいか?」
恭哉と、一緒に過ごせるの?
嫌なわけないじゃない。
言葉は出てきてくれないから、頭を縦に振って恭哉に肯定の意思を示した。
「じゃあ少し待ってろ。そっちの社長と話してくるから」
テラスから出ていく恭哉を見送り、体は温もりが消えたことを寂しく感じている。
だから、早く戻ってきてよ。
恭哉。
聞きたいことも言いたいことも一杯あるのに、私の思考回路はショートしてしまったように働かない。
「悪い。今まで連絡できなくて。だけど、ようやくこれで、咲絢の隣に俺が立っていても、誰にも文句は言えなくなったんだ。今まで……」
恭哉はくるん、と私の体を向かい合わせて、頬を両手で挟み込んだ。
「必死で頑張ってきた。俺も、咲絢の声が聞きたかった。逢いたかった。我慢してたんだ……」
「恭哉……」
広い胸に体を預けて、久しぶりに恭哉の香りに包まれた。
恭哉の声が、掠れて切なく揺れている。
不思議だよ。
もう何も聞かなくても、恭哉の一言一言を聞くだけで安心が胸の靄を晴らしていくなんて。
できればずっと、こうしていたいよ……。
私を抱き締めたまま、恭哉がポツリと言った。
「今日はこのホテルに部屋を取っている。咲絢の事務所の社長も了解済みだから。……咲絢、…いいか?」
恭哉と、一緒に過ごせるの?
嫌なわけないじゃない。
言葉は出てきてくれないから、頭を縦に振って恭哉に肯定の意思を示した。
「じゃあ少し待ってろ。そっちの社長と話してくるから」
テラスから出ていく恭哉を見送り、体は温もりが消えたことを寂しく感じている。
だから、早く戻ってきてよ。
恭哉。