桜色ノ恋謌
「スマホ向けのSNS 。Twitterみたいにただリアルタイムで会話ができるだけじゃなくて、最近はゲームアプリに力を入れてるからそれの儲けが業績の多数を占めてるな。ベンチャー企業としても株価は上がってきてる。この前は経済紙に一部上場も……」

「あの、ごめんよく分かんない」


株価の話なんてされても、分かるわけないでしょ?


「携帯を持ってる日本人の3人に1人はうちの会員らしいってさ。俺はそのSNS で儲けてる社長なの」

「儲けてる…って、一年間でどのくらいになるの?」


それこそ想像もできないよ。


「まぁ、何十億単位ではあるよな」

「なっ…何十億!? 全然言わなかったじゃん!!」


桁違いだ、そんなの。一体いつから?


「始めたのは高校ん時。高校を卒業するときに一般サービスを始めて、それから広まるのは早かったかな。もう少し時間かかるとは思ってた」

「……今でも信じらんない」


恭哉はフッと笑って、私の髪に指を絡めた。


「……それからメールで聞いてた、ホテルに同伴してた女ってのは、多分秘書の成田さんの事だろ。確かにあの日はホテルで商談があったから同席させただけ。疚しいことは、何もないから」

「……そ…なの?」

「成田さんとは、ただの上司部下の関係。俺は咲絢以外見てないから」

「……うん。嬉しい……」




なんだほら、やっぱり。


疑心暗鬼になるのは良くないね。


信じる気持ちさえ曇らせてしまうんだから……。



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