桜色ノ恋謌
とうとう高橋さんの送別会の当日になった。
先日から、私の担当はすでに鳥羽さんに替わっている。
送別会のパーティ会場になっているホテルには、鳥羽さんと同行して行く事になった。
あまり畏まったドレスではなく、可愛い感じのワンピースにショールを羽織り、マンションの前で鳥羽さんの車を待った。
およそ5分ぐらいしてから、鳥羽さんが運転する迎えの車が目の前に滑り込んで来た。
「悪い。帰宅ラッシュに巻き込まれて遅れちまった。乗って?」
助手席の窓を開けて、鳥羽さんは車から降りずに声だけかけてきた。
黙って後部座席に座るとシートベルトを着けた。それを確認してから、鳥羽さんが車を出す。
鳥羽さんと再会して以来、私達の間ではプライベートに関する話は一切出ていない。
恭哉のプロポーズを受けた今、鳥羽さんの気持ちがもし私にあったとしても、それには応えられない。
鳥羽さん自身も私の事をどう思っているのかは分からないし。
仕事以外の私語は話すつもりはないという意思表示で、私はずっと目を窓の外に向けたまま一度も運転席を見なかった。
もし、一瞬でも視線が合ってしまえば……。
私の心を見抜かれそうで、怖かったから。
もう鳥羽さんへの想いは封印することにしたんだから。恭哉の気持ちに応える事にしたんだから。
だから、誰も私の心を覗かないで欲しい。
先日から、私の担当はすでに鳥羽さんに替わっている。
送別会のパーティ会場になっているホテルには、鳥羽さんと同行して行く事になった。
あまり畏まったドレスではなく、可愛い感じのワンピースにショールを羽織り、マンションの前で鳥羽さんの車を待った。
およそ5分ぐらいしてから、鳥羽さんが運転する迎えの車が目の前に滑り込んで来た。
「悪い。帰宅ラッシュに巻き込まれて遅れちまった。乗って?」
助手席の窓を開けて、鳥羽さんは車から降りずに声だけかけてきた。
黙って後部座席に座るとシートベルトを着けた。それを確認してから、鳥羽さんが車を出す。
鳥羽さんと再会して以来、私達の間ではプライベートに関する話は一切出ていない。
恭哉のプロポーズを受けた今、鳥羽さんの気持ちがもし私にあったとしても、それには応えられない。
鳥羽さん自身も私の事をどう思っているのかは分からないし。
仕事以外の私語は話すつもりはないという意思表示で、私はずっと目を窓の外に向けたまま一度も運転席を見なかった。
もし、一瞬でも視線が合ってしまえば……。
私の心を見抜かれそうで、怖かったから。
もう鳥羽さんへの想いは封印することにしたんだから。恭哉の気持ちに応える事にしたんだから。
だから、誰も私の心を覗かないで欲しい。