桜色ノ恋謌
……なんで?

私が何かした?



「……アンタのせいで……!」


ぱぁん、と小気味良い音がしたな、と思うのと左頬に痛みが走ったのは、ほぼ同時だった。



あ、私陽菜乃ちゃんに叩かれたんだー、と、ようやく意識できたのは、回りの人達が騒ぎだしてから。




その間にも陽菜乃ちゃんからの私に対しての罵詈雑言は止まることを知らない。


「仕事も干されたのに、なんで昂まで取んの!? 梶社長までアンタのバックアップしててさ!どうせカラダ使って仕事取ってきたんでしょ!? アンタがいなけりゃあたしが今頃…っ!!」



えぇぇぇえ!? 陽菜乃ちゃん、何か勘違いしてない?どうしてこうなるの!?


カラダ!?


体を使って仕事を取ってるって勘違いしてるの?


そんなことしてないけど!?


昂って…鳥羽さん!? だって、鳥羽さんを離さなかったのは陽菜乃ちゃんの方じゃないの!?




誰もが手出しもできず呆然とその場の喧騒を見守る中、一人動いたのは鳥羽さんだった。




「陽菜乃、止めろ!! 恥をかくだけだ。……あっちに…」

「昂!! なんで最近来なくなったの!? あのオンナのせいでしょ!?」


敵意を露に私を指差す陽菜乃ちゃんには鬼女のような気迫があった。



鳥羽さんに連れ去られる陽菜乃ちゃんをただ呆然として見送ったら、後ろから肩を叩かれて。


振り返ってみれば。


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